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アフガニスタンの音楽

 アフガニスタンは文明の十字路とかシルクロードの十字路などとよばれ、海上輸送が流通の中心手段になるまでは東西交易の重要な地域でした。そのため幾多の国々による侵攻、侵略がくりかえされ、そのなかでの様々な人々の流入・流失と共にいろいろな地域の文化も伝えられてきました。

 アレクサンダーの東征時には併合した国々から人々を徴用し、たくさんの兵とともに商人などの雑多な人々も引き連れての行軍だったので、ギリシャ文明に加え各地の文化もアフガンの地に伝わり、その後のシルクロードの登場で、それをたどって東西から多くの文化がこの地に伝わってきました。
 また、ティムール軍の侵攻後ヘラートではイスラム文化が隆盛を迎えました。
このような歴史の中でこの地域には数多くの民族が住むようになります。それらの民族は固有の伝統音楽・民謡などを伝承しつつ、他の民族の文化の影響を受けつつ緩やかながら少しづつもとの形を変えていった事でしょう。

 影響を強く受けた文化の違いから音楽の特徴も地域ごとに異なります。ペルシャとの国境に近接しているアフガン西部の都市ヘラートではペルシャ音楽の影響が強く、使用される楽器もぺルシャ系の楽器がアフガン風に改良されたドタール、タンブールなどの弦楽器やゼルバガリー(脇の下)という名の打楽器がよく使われ、ペルシャの民謡なども好んで演奏されます。
 北部アフガニスタンでは中央アジアから移り住んだタジク、ウズベク、トルクマンなどの民族が多く住むためそれらの国の音楽の影響が強くアフガン風タジク音楽、アフガン風ウズベク音楽とでも言うんでしょうかそんな感じの音楽がよく演奏されるようです。また北部の都市マザーリシャリフでは40日間続く『グレソルフ(赤い花の祭り)』の間はアフガン中から多くの音楽家が集まり市内各地で演奏が繰り広げられるそうです。
 東部から南部にかけて住むパシュトゥーン人の地域ではインド音楽の影響を強くうけていてタブラやハルモニュームなどのインド系の楽器とアフガン楽器のラバブという弦楽器やサリンダという弓で弾く楽器がよく使われます。
 この他ハザラの人々は二弦のダンブーラと言うアフガンでは一般的な楽器を使い、東部のヌーリスタンの人達はワジなどとよばれる四弦のハープや弓でひく二弦のサラニと言う楽器で演奏します。

 各民族やそれぞれの地域に伝わる民謡が演奏される事が多いのですが、同じアフガン民謡とはいえそれぞれの曲調によりパシュトゥーンの曲だとかウズベクの曲、ヘラートの曲というように区別されています。(日本で津軽民謡も沖縄民謡も日本の民謡というのと同じですね)
 その他ペルシャやインドの宮廷で演奏されていたような音楽や流行歌、イスラムの音楽、もちろんそれぞれの音楽家の作曲した曲も演奏されます。

 演奏者に関しては宮廷音楽家のような人もいたのでしょうが、基本的にプロの音楽家は少なく、各地方地方にいた歌のうまい者や楽器の演奏の上手な者が祭りや結婚式などの祝いの場に呼ばれて演奏する事がほとんどで、何処の街や村にもそのような人はいたようです。
 1970年代に入るとウスターズ(師匠)と呼ばれる音楽家に師事し、プロの音楽家として演奏する人も増え始めました。ラジオの普及にともなってインドの映画音楽も多くながされ、その影響を受けたアフガンポップスといわれる流行歌も人気を博しました。そして、アフガンの音楽シーンもどんどん変わろうとし始めたのもつかの間、政情が不安定になり内戦に突入する中で、ミュージシャン達が楽器の代わりに武器を手にしたり、難民として他国へ逃れる事でアフガンの音楽状況は停滞する事になってしまいました。しかし、難民となった音楽家たちはそれぞれ逃れた国で音楽家として活動を続け、アフガン音楽の伝統を守ってきたのです。

アフガンの楽器

 ラバブ


 ボディーは桑の木を彫ってつくられ、ネックの部分まで彫られて空洞になっています。革は山羊の皮でペグ(グシャカ)も桑の木でペグの頭は花をモチーフに彫られています。フレットはガット弦でアフガンのラバブは4フレットありパキスタンの物は3フレットがつくられます。3本のガット弦でメロディーを弾き、2〜3本の低音の共鳴弦と11本以上のスチールの共鳴弦があります。ちなみに写真のラバブは2本の低音弦と14本の共鳴弦があります。大きさは74センチと80センチの2タイプがあります。


 ドタール
 

 ドタールはヘラート方面でよく演奏される楽器でこれも桑の木でつくられていて、ペグも桑の木ですがドタールのペグの頭は平べったい円形になってます。弦はすべてスチール弦で1本の旋律用の弦と3本の低音弦、10本の共鳴弦が張られています。インドのシタール用のピックに似たピックで演奏されます。長さは約120センチ程あります。
 

タンブール


 形は上のドタールに似ていますが、このタンブールもラバブのようにネック部が彫られていて空洞になっています。木はこれも桑の木でペグも桑の木で形は角のようになっています。弦はすべてスチールで、旋律用の同音の2本弦と4本の低音弦、11本以上の共鳴弦が張られています。ドタールで使われるのと同じピックを使います。このタンブールもラバブ同様大小2タイプありおおきいのは137センチ、小さいのは115センチあります。
 

 ダンブーラ
 
 アフガンでは一般的な楽器で、形は上のタンブールに似ていて、ボディーはネック部分まで空洞で、これも桑木を彫って作られ、弦は2本のナイロン弦のみで、コレも大小2タイプあり大きいのは99センチ、小さいのは70センチです。


 サリンダ

 
 
これは馬の尾の毛をつかった弓で弾きます。60センチ弱のおおきさで、3本の旋律用の弦のうち高音用の2本のスチール弦と1本のガット弦1本のスチール弦の低音弦と12本の共鳴弦が張られています。



 ギジャック

 
 この楽器は金属製の箱状の物をボディーに使い、弓で弾きます。
 写真のギジャックは写真の演奏者の手作りでボディーにはオイル缶を使っています。弦はスチール弦3本です。アフガン北部のウズベク、ハザラ、トルクマンなどにより演奏されます。

 

 ワジ
 
 このワジと呼ばれる4弦のハープは八の字型の5センチ程の深皿に山羊革を張り弓形の木を取り付けそれに4本の弦を張った物です。50センチ位の長さで高さは35センチ程です。
 主にヌーリスタン地方で使用されています。



 ゼルバガリー

 西部、北部ではよく演奏される、脇の下に置いてたたかれる事から、脇の下という意味のゼルバガリーと呼ばれます。写真の物は桑の木をくりぬいてつくられていますが、右の写真のようにもともとは陶器でつくられていたようです。高さ40センチで打面の直径は20センチ程です。

 ドール
 
 このドールと呼ばれる打楽器は樽状にくりぬかれた太鼓で2面に山羊の革が張られていて写真のドールは40センチ程の長さで打面は大きさが変えてあります。この形の打楽器はいろいろな国でよく使われていますね。

 ダエラ

 コレも写真がないのですがよく使われる打楽器で、タンバリンを大きくしたような打楽器で小さいシンバルはついていません。6センチ程の深さで25センチ以上の直径でいろいろな大きさの物がつくられています。ダエラというのは円という意味で見たままの名前です。

 タブラ

 この楽器を見た事がある人はたくさんいると思いますが、インドではよく使われる打楽器でインド音楽の影響を強くうけたアフガン東部地方では頻繁に使用されています。

 ハルモニューム

 インドでは頻繁に使われる楽器ですがアフガンでもよく使われています、写真の奥の部分を手で動かして空気を入れる事で音を出します。この写真のハルモニュームは携帯用の小さめの物で、よく使われるのはもう少し大きな物です。

 

 アフガンで使われる笛はトゥラという縦笛の他左の絵のような形のスルナイといわれるアシのような物で作ったダブルリードを使う物があります。インドではシャナイ、中央アジアではズルナと呼ばれる似たような笛があります。基本的には同じ物だと思うのですが。
 他には口琴を演奏する人もいます。


 その他

その他にもいくつかアフガン独自の楽器があるのですが資料入手次第紹介します。上の写真は楽器ではないのですが、音が出る物という事で紹介します。これは鳥笛です。少しくぼんだ皿状の部分に皮を張り、右の写真のようにギュっと張り張った皮を指でとんとん叩くと押された空気で取り付けられた笛が鳴る仕組みで、なかなかいい音が出ます。