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アフガニスタンの衣

 服装一般

 タリバーン政権崩壊後、都市部では洋装の人達も見かけることが多くなったようです。現在は駐留中の多国籍軍が伝統衣装を着る人を警戒する傾向にあるために伝統衣装を着ないようにしているという話も聞きます(2006年現在)。しかし、地方では伝統衣装を着る人の方が依然多いようです。
 「アフガン服ってどんなもの?」というと、ここ数年の間に映像などでよく見かけるようになりましたが、男性の上着は長袖で裾の長いプルオーバーのワイシャツで、下はズボンという感じとは少し違い「上着と共布の胴回りが3メートル位ある柔道着の下」といった感じというのが無理矢理の説明になりますか。これはパキスタンの男性が着ているシャルワール・カミーズとほぼ同じ作りなのですが、若干ディテールが異なるのが非常に興味深い点です。起源はアフガンの方だと思うのですが確証はありません。
 色や丈の長さは若干変わりますが違いは概ね下図のような感じです。ちなみにアフガンの山間部では山を登り下りしやすいようにズボン部の丈は短めで裾幅は広めにするようです。

アフガニスタン パキスタン  
丸首(襟なし)/スタンドカラー スタンドカラー/レギュラーカラー
ストレート ボタン留め
山間部
 短め(膝上)、下は裾が広め
都市部
 長め、膝丈くらい
概ね長め(膝丈+3インチ位)

 
色は白が好まれますが、埃や泥はねですぐに汚れてしまうので替えをたくさん持っている人(お金持ち)好みで、普段は比較的汚れの目立たない色の服を着る場合が多いようです。しかし、金曜日は白い服を着て颯爽とマスジッド(モスク)へ礼拝に向かう人が眩しいですね。またラマダーン(断食月)あけのイード(祭り)にむけて皆が新しい服を仕立てて、気持ちも新たに祭りを楽しむようです。これらは既製服もあるのですが、仕立て屋さんでオーダーメイドするのが一般的です。まず生地屋さんで予算と相談しながら好みの生地を7ガズ(布地を買う際の単位)購入し仕立て屋さんで好みの形、長さなどを言って仕立ててもらいます。特におしゃれな人達は襟から胸にかけて刺繍を入れたりします。仕立て屋さんには下の写真のように刺繍のサンプルが飾ってあったりします。



 ベースになる服の上には背広を着たりベストを着たりするのですが、ベストを仕立てるときは、通常ボタンは飾りでボタンホールがあいてないものが出来上がるので、ボタンを留めたいときは、ちゃんと注文しないといけません。
 ベースの服にはポケットは一般的に1個か2個なのでカバンとかを持ち歩かないアフガン人にはポケットのたくさんあるベストはなかなかに便利で多くの人か着用しています。


 寒い冬の防寒着としてチャパンという日本のどてらのような物があります。アフガンのカルザイ大統領がいつも肩に羽織っていますが、彼の物はシルクのチャパンで薄手の物ですが、日常使う防寒用の物は綿の入った綿布製の物が一般的でしょう。(今ではお年寄りが着ていることが多く若い世代はジャンパーなどを着るのを好みます。) その他に、めったにお目にはかかりませんがラクダの毛で織られた布を表地に使い襟や袖口にシルクの刺繍を施した高級品もあります。
 チャパンの柄はほとんどが縦のストライプで綿の裏地には渋い花柄が好んで使われます。
 このチャパンの最大の特徴は袖が非常に長くて寒いときは袖を伸ばして手を隠し、手を使うときは袖をたくし上げて手を出します。
 また、トルクマンやウズベクの女性たちはシルクの絣で作った物やシルクの刺繍をふんだんに施した物を着ていました。

 

その他の防寒着で、アフガン服の上着の形でひとまわり程大きいコーデュロイ地の"グビチェ”(上の左端の写真)と呼ばれる裏地付きの服を着る人達もいます。ちなみにカーブルにいる友人はこれを着ていますが周りの若者たちに田舎者とか年寄りみたいなどと言われながらも寒さに勝てず着続けているとのことです。

 その他にはアフガン固有の物ではないと思われますが、パトゥーと呼ばれるショールがあります。これは1.5m x 2.5m程のウールの一枚布で写真のように上半身をすっぽりと覆うように身にまといます。
 皆それぞれ巻き方に自分のスタイルをもち、こだわりをもって使っています。身にまとわないときは風呂敷代わりに使ったり、毛布、祈りのときの敷物としても使ったりします。とても使い勝手のいい防寒着といえましょう。
 ウール製品なので当然品質には善し悪しがあり、バザールへ行くと化繊混紡のものから軽い羊毛で織られた最高級品までと幅広い品揃えから選択できます。



 履物
 一般に普通の男性は日本で言うところの健康サンダルを愛用しているようです。冬は革靴を履いている人も見かけますが数は多くありません。パシュトゥーン人は革でできたサンダルを好んで履いているような気がします。

 その他
 ムスリマーン(イスラム教徒)は髪を覆うために帽子をかぶったり、布やターバンを巻いています。大多数がムスリマーンであるアフガン人も帽子もしくは帽子の上にターバンを巻いたりします。一般的に帽子は白い物が多く、細かい刺繍の入った物は高級品とされますが、白地に白い糸で刺繍された物が多いため見た目にはなかなか解りません。帽子屋さんではその刺繍の精巧さをアピールしてくるのですが......。地方によっては色とりどりの刺繍を施した帽子も見かけます。

 他にアフガン人がよくかぶるパコール(左部写真)と呼ばれるウール製の帽子があります。これは写真でも解るように円筒状になっていて、筒のところをぐるぐる巻き上げて形を整えてかぶります。これも、それぞれ好みの巻き方やかぶり方があるようです。




 着用する人は減ってしまったような気もしますがターバンもまだ健在です。色は白、黒、茶色やダークな色の物が好まれます。埃のきつい時は背中にたらした「尻尾」の部分で顔を覆いマスク代わりにしたりします。長さは5m位で巻くときにぐしゃぐしゃになりそうですが普通は2〜3分で上手に巻き上げてしまいます。巻き方もいろいろですが背中に一方の端をたらすスタイルが多くみうけられます。
 「ターバンって暑くないの?」という質問をよくされますが、彼らは髪を剃っていたり、短髪だったりという事と慣れもあり、あまり気にしないようですが夏になると心なしか着用率が落ちるような気がします。

 女性の服
 男性の話ばかりで「じゃあ女性は?」と思われているかたもいらっしゃると思います。アフガン人は敬虔なムスリマーンが多く、その戒律に従って女性は家族以外の人にはその姿をあらわにしません。共産党政権下の時はそういった戒律はあまり厳しくなく都市部では学生さんがブラウスにスカートと云った格好で通学なんて事もあったようですが、タリバーン政権下では厳しい戒律尊守の指導(西側各国からは人権侵害だとの声もありました。)で女性はブルカと呼ばれるシャトルコックを逆さにしたようなベール、というよりはむしろマントを被らなければ表に出る事さえ出来ませんでした。この風習はタリバーンが新しく導入した訳ではなく昔からあったのですがタリバーンはすべての女性に強制していたのです。しかしながら、お年を召した女性は「ブルカを被らないと外を歩くとき不安だ。」というケースもありますし、夫や親からブルカ無しでの外出を許されないと云ったケースもあるようです。タリバーン政権崩壊後は少しずつですが顔を出して外出する女性も増えてはきているようですが、都市部に限られるようです。
 ちなみにブルカの下には以外と派手な服が好まれるという話です。いずれにせよアフガンの女性はおもてを歩き回る習慣がないので筆者(男性)が知りうる女性の服はこれだけです。ブルカの中は身内しか知り得ないということです。