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アフガニスタンの絨毯1       to 絨毯2

絨毯の始まり                 

 絨毯が織り始められたのが、何時頃からなのかハッキリした事は解っていませんが、現存する最古の絨毯は、20世紀はじめにモンゴル国境近くのシベリア南部アルタイ山脈のパジリク墳墓で、凍り付いた状態で発掘されたものです。それが織られたのは、およそ2400年程前のようです。約2メートル四方の大きさで、鹿や騎馬などの繊細な模様が織られ、織りの技術は現在のものと大差のない高度なものです。

 そもそも絨毯の材料となるウールを刈り取るための羊、山羊の家畜化が始まったのは、紀元前7000年頃のメソポタミアの時代だといわれ、毛織物が織られたのはそのメソポタミアで、紀元前3000年頃だといわれています。家畜化が始まって長くは経たないうちに羊毛や皮の利用は始まった事でしょう。
 初めは繊維を絡み合わせてつくるフェルトのようなものから始まったのではないでしょうか。その後、糸を紡ぐ技術が確立されて、布が織られキリムそして絨毯へという流れで技術が発展して行ったのでは無いでしょうか。

フェルトの制作

 ウズベクやトルクマンのユルト、モンゴルのパオなどに見られるように床から壁、天井に至るまでフェルトで覆われています。他にもマントなどの防寒着や鞍の上の敷物など色々なものに使われています。というのもフェルトを作るのは意外と簡単にできるからです。
 まず、のり巻きに使う巻き簾を大きくしたような物を用意して、その上に羊毛を敷き詰め(作る物の厚さにより量を調節し、柄を入れる時はベースとなる毛のうえに色付けしたウールで模様を入れます。)細い棒などでバンバン叩き、羊毛を毛羽立たせた上に水やお湯、あるいは石鹸水などを撒き、のり巻きを巻くようにしっかりと圧力を加えながら繊維を十分絡ませなて作ります。

絨毯の制作

 アフガニスタンの絨毯が織り上がるまでの過程を少し説明します。

羊毛:
 アフガニスタンで使用されるウールは主に次の6種類です。
  1、カラコル
    ・アフガニスタン北部を中心に飼育
    ・長短2タイプの長さの毛を持ち、耐久性に富み光沢が
     ある。
    ・毛の色は灰色と黒で、冬は零下30度、夏は48度にも
     なる厳しい環境の中で飼育されます。
    ・バルーチ、ハザラなど少数を除き大部分の絨毯に
     使用される。
  2、ギルザイ
    ・アフガニスタン南部、主に遊牧民により飼育。
    ・毛の色は様々あり、質は粗悪気味。
    ・主にハザラジャートに住むハザラ族が商業用のキリムに
     使用。
  3、カンダハリー
    ・アフガン南部カンダハル周辺の半砂漠地域で飼育。
    ・毛は白で顔に黒い斑点があったり、片耳が黒かったり
     します。
    ・以前は、良質の毛はロシアへ輸出され、粗いが強い毛は
     トルクマンが使用
  4、ハザラギー
    ・アフガン中央山脈のハザラジャートで飼育される。
    ・柔らかく良質の毛で衣類にも適する。
    ・毛の色は多種あり黒、濃茶、淡黄色、オフホワイトなど。
    ・ハザラ族が自家用のキリムを織るのに使用。
  5、バルーチ
    ・アフガン南西部ニムローズ州周辺で飼育。
    ・身体の毛は白で頭と足は黒か茶色。
    ・長い耳が特徴で毛は良質で柔らかい。
    ・主にバルーチ地方の絨毯、キリムに使用。
  6、ヘラーティー
    ・アラブ種、ヘラート種など総称しててヘラーティーと
     呼びます
    ・バルーチの絨毯に使用

羊毛の刈り取り、梳き、紡ぎ: 
 
羊毛の刈り取りは春(四月中旬)と秋の(九月)の2回毛を刈ります。
 春に刈りとる毛は七ヶ月ものの毛で質は良く絨毯用に使われます。秋に刈り取る毛は伝統的に絨毯には使われませんでしたが、しだいにトルクマンが商業用絨毯に使うようになりました。
 刈り取られた毛は絡まったゴミや埃をとり、良質の糸を紡ぐため、色や質によって丁寧に選別されます。
 選別されたウールは、板に鉄の細い棒が串の歯状に打ち込まれた梳毛具を地面に置き、ウールをその歯にひっかけ、強くひいて梳いていきます。すると長い毛と短い毛にわけられ、細かなゴミもとれます。しかし、この方法だと一人で一日1キロ程度のウールしか梳けません。このように良く選別され、丁寧に梳かれたウールは、紡ぎ職人にとっても非常に紡ぎやすく良質の毛糸を紡ぐことができます。
 次に紡錘を使って、梳かれた毛に撚りを掛け紡いって、ようやく毛糸が完成します。この様に絨毯用の良質の毛糸はすべて手作業で行われていました。

 しかし、商品としての絨毯の需要が増大するにつれ、安価で大量のウールが必要になり、1970年代に紡績機が導入されるようになります。機械の導入が進むとウールの十分な選別もされず、質の異なるウールを混ぜてつむぐようになったために粗悪な毛糸が出回わり、絨毯の質も落ちていきました。
 品質低下を危惧した政府は、1977年に紡績機の使用を禁止するまでになりましたが、絨毯工場の多くは安価な毛糸を求め、隣国パキスタンから粗悪な毛糸の輸入が増大し、それにともない商業用絨毯の品質の低下を招く事になりました。

染色:
    

 染色は元来は草木染めでしたが、19世紀後半に化学染料の使用が始まり、手間ひまのかかる草木染めは減少して行きましたが、最近では再び草木染めの毛糸を使用する工房も増えてきています。
 アフガニスタンで草木染めに使用する原料はというと..
 青色はインディゴ(藍)を使っていましたが、ジーンズ用にインディゴの需要が世界的に増加し、安価での入手が困難になり、化学染料の使用が増加しました。
 赤色は茜科の植物を使用します。赤色のバリエーションを増やすために、他染料と混ぜたり、一旦染めた後に別の染料で染め直したりします。
 黄色はステップ気候で育つエスパラックという野草を使います。アフガニスタンではマイマナ地方に生育し四月〜五月に採取します。
 緑色は最初に黄色に染めて、インディゴやクルミの殻などで染め直します。クルミの殻の他には麦の茎、ザクロの皮なども使います。
 白、黒、茶は地毛の色そのままで使います。その他の色は種々の天然染料を使い様々な色に染めますが、染めたい色をだすには職人の経験と勘に依るところが大きいようです。

織り工程:

 アフガニスタンでは基本的に水平機を使い、イラン結びで織ります。絨毯の柄は一般的に各部族ごと家庭ごとに代々伝えられた模様を織ります。その模様は絨毯の中心的な花柄であったり、ボーダーの柄、中心の花柄の周りに配されるモチーフ(グルアーラと呼びます。)など各所にそれぞれの伝統が残されています。
 トルクマンやバルーチの影響で絨毯を織るようになった部族の幾つかは独自の伝統柄を持たないために、トルクマンやバルーチの柄を借用する事が多いのですが、たいていの場合織りの具合や色使いなどで何処で織られたか解ります。商業用絨毯の工房では方眼紙などに色づけされた図面を使って織られます。



 織り上がった絨毯は今では機械で毛足を刈りそろえていますが、元々は大きなはさみで刈りそろえていました。もちろん今でもはさみを使う場合もあります。その後水洗いをして、天日で干して完了です。

 この様に羊の飼育から始まり、幾多の過程を経る間に多くの人々の手仕事の結果、一枚の絨毯が織り上がるのです。

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